フルマラソンを目指す市民ランナーにインターバル走は必要か


市民ランナーのトレーニングメニューとして、よく挙げられるのが「インターバル走」です。

代表的なメニューとしては、
1000m ×5本
400m ×10本

といったメニューをこなしているランナーを見かけることも多いと思います。

ランニング雑誌やSNSでも、インターバル走は定番のポイント練習としてよく紹介されています。

そのため、フルマラソンでのベスト更新を目指している市民ランナーの方であれば、取り組んでいる方も多い印象です。

ただ、フルマラソンを目指す市民ランナーにとって、インターバル走は本当に必要なのでしょうか。

この疑問をお持ちの方は多いかと思うので、ご興味ある方は是非ご覧ください!

いきなり結論

  • 基本的に優先度は低め
  • ただし、目指す「目標タイム」「種目」によって、インターバル走の必要性は異なる


インターバル走、あんなに頑張って取り組んでいたのに、優先度低めなの?と思った方もいるはずです。それをじっくり解説してゆきたいと思います。

フルマラソンは言わずもがな、42.195kmという長い距離を走る競技です。
一方でインターバル走は、比較的短い距離を速いペースで繰り返すトレーニングです。

ここでは、ランニング理論として有名な ジャック・ダニエルズ博士 の「Daniels’ Running Formula(VDOT理論)」を参考に、インターバル走の位置づけを簡単に整理します。

ダニエルズ式ではトレーニング強度がいくつかに分類されており、代表的なものとして

Iペース(Interval):インターバル走(VO₂max領域)
Tペース(Threshold):乳酸閾値走
Mペース(Marathon):マラソンペース
Eペース(Easy):イージーラン
があります。

例として、マラソンペースとインターバルペースを比較すると、次のようになります。

例)サブ4クラス
Mペース:5’40/km
Iペース:4’50/km

例)サブ3.5クラス
Mペース:4’58/km
Iペース:4’18/km

例)サブ3クラス
Mペース:4’15/km
Iペース:3’41/km


このように、インターバル走はマラソンペースよりもかなり速いスピードで行うトレーニングです。
もちろんスピード型か持久型によって、Iペースは異なるのが実態です。例えばスピード型のランナー(特に男性)かつ、サブ3.5クラスの走力であれば、Iペース(4’18/km)は比較的余裕という方が多い気がします。

今回は、フルマラソンを目指す市民ランナーにとって、このインターバル走がどのような意味を持つのかを少し整理してみたいと思います。

インターバル走で鍛えられる能力


マラソンの走力を決める「3大要素」として広く知られているのは

  • VO₂MAX(最大酸素摂取量)
  • LT(乳酸性作業閾値)
  • ランニングエコノミー

です。

インターバル走は、この中のVO₂MAX(最大酸素摂取量)を鍛えるのが主な目的です。
VO₂MAXとは、簡単に言うと運動中に体が取り込んで利用できる酸素の最大量のことです。

もちろん鍛えられるのはVO₂MAX以外の要素もありますが、それを語り出すと超絶長くなるので、
今回は先述のⅠペースで近辺で走ると、VO₂MAXが強化される
と、話しを単純化します。

フルマラソンは持久力の競技


フルマラソンは言わずもがな、42.195kmという長い距離を走る競技です。

そのため、最も重要になるのは、みなさんもお気づきかと思いますが、やはり持久力です。

長い距離を一定のペースで走り続けられること
後半に大きくペースを落とさないこと

こういった持久力を決める最大の要素が「LT(乳酸性作業閾値)」と「ランニングエコノミー」であり、「VO₂MAX(最大酸素摂取量)」が占める割合は相対的に低いということが、研究結果からも言われています。そして、私の体感とも一致しています。

LTとランニングエコノミーを鍛えるにはどうすればよいか?を語ると、これまた超絶長くなるので、今回はふれません(笑)

では、フルマラソンを目指す市民ランナーにとっては、インターバル走は不要なのか?というと、そう単純な話しでもありません。その人が目指すタイムによって、必要性は異なるというのが私の見解です。

サブ3とサブ4では求められる能力が違う


フルマラソンは、どんな走力の人であっても同じ42.195kmを走る競技ですが、走力によって求められる能力のバランスはかなり違います。

例えばサブ4の場合、レースペースは約5分40秒/kmであり、走る時間はおよそ4時間です。

このレベルのランナーの場合、多くのケースで問題になるのはスピードではなく、4時間そのペースを維持できるかです。


これは市民ランナー界のあるあるですが、多くのランナーは

「5分40秒/kmというペース自体はそこまできつくない。ただ、それを4時間続けるのが難しい」
と感じているのではないでしょうか。

一方、サブ3ランナーになると少し事情は変わります。

サブ3のレースペースは約4分15秒/kmです。
走る時間は3時間で済みますが、その代わり求められるスピードは大きく上がります。

サブ4ランナーがサブ3.5を目指すためには、1kmあたりのペースは
5’40/km(340秒)⇒4’58/km(298秒) に上がるため、340÷298≒1.140・・で約14%スピードを上げる必要があるのに対して
サブ3.5ランナーがサブ3を目指すためには、1kmあたりのペースは

4’58/km(298秒)⇒4’15/km(255秒) に上がるため、298÷255≒1.168・・で約17%スピードを上げる必要があります。

つまり、目標タイムが速くなればなるほど、求められるスピードは加速度的に上がっていくのです。

サブ4ランナー
→ 出力は比較的低いが、長時間走る必要がある

サブ3ランナー
→ 走る時間はサブ4より短いが、高い出力が求められる

とも言えます。

ただし、ここで誤解してはいけないのは、サブ3ランナーに持久力が必要ないというわけでは、もちろんありません。サブ3ランナーであっても、それ以上のレベルのランナーであっても、フルマラソンのタイムを決める一番の要素は持久力であることに変わりはありません。

ただ、サブ3のような高いレベルになればなるほど、
「速いスピードを維持できる持久力」

すなわち
持久力」+「速いスピード」も必要になるということです。

だからこそ、高いレベルのランナーには、速いスピードで走るインターバル走のようなトレーニングの重要度は相対的に増します。

これらのトレーニングで基礎スピードを引き上げることで、マラソンペースに余裕を持たせることができるからです。そのため、目標タイムのレベルが上がれば上がるほど、インターバル走の必要性は増していくと考えています。

反面、サブ4やサブ3.5といったタイムが目標であり、
レースペース自体はそこまで速く感じないのであれば、インターバル走の優先度は下げてよいかと思います。

市民ランナーにとってインターバル走は結局不要なのか?


では、サブ3を目指すような速い市民ランナー以外は、インターバル走は不要!!
かというと、私自信は全くそう思っていません。

もしインターバル走が

  • 気持ちいい
  • 仲間と競い合うのが楽しい
  • 達成感がある

そう感じるのであれば、どんどん取り入れていいのではないかと思います。

私たちはプロではなく、趣味で走っている市民ランナーだからです。

30年以上もランニングを続けていて感じるのは、結果だけを求めて走ると疲れてしまうことがあるということです。
そして、もし目標を達成できなかったときのダメージも大きくなってしまいます。

だからこそ、市民ランナーが大切にすべきは、結果だけではなく「プロセス(過程)」なのではないかと思っています。


トレーニングを工夫したり、試行錯誤したりする。
その過程自体が楽しいのであれば、それだけでも十分に価値があるのではないでしょうか。


もちろん、

「結果が出ないと意味がない」
「何としても目標を達成する」

そういう気持ちで競技志向で取り組む人を否定するつもりはまったくないです。

むしろ私自身も、ベストタイムを更新するために、日々いろいろと模索しています。

ただ、その模索する過程そのものが楽しいと感じられていることが、ランニングを長く続けられている理由です。

なので、インターバル走が楽しいと感じるのであれば、誰に何と言われようと、記録達成のための最短ルートでなくても、どんどんやればよいと思います。

怪我にはご注意


ただし、一点だけ注意が必要なのは怪我のリスクです。

インターバル走は走行距離こそ短いものの、スピードを出す分、体への負担は想像以上に大きいです。

インターバル走のような速いペースは

  • 接地衝撃が大きい
  • 筋肉や腱への負担が増える

といった問題が起こりやすくなり、普段痛くならない箇所を突然痛めてしまったりします。

人間は速く走ろうとすると、普段のランニングでは動員していない部位も動員して、何とか速く走ろうとしあす。その時に普段使わない筋肉は特に強い負荷を受けやすく、肉離れや腱の炎症の原因になってしまいます。

また、市民ランナーの場合、十分な基礎体力や筋力が整う前にインターバル走を始めてしまうケースが少なくありません。本来インターバル走は

  • ある程度の練習量(走行距離)
  • 基礎的な筋力

といった土台ができた状態で取り組むトレーニングです。

SNSやYouTubeなどの影響で「速くなるためにはインターバル走が必要」と考え、
基礎ができる前にはじめてしまう市民ランナーの方が少なくありません。

その結果、身体が強い刺激に耐えきれず、怪我につながることがあります。

安全な取り組み方としては、まずは

目標とするフルマラソンペースより少し速いペース

くらいから始めるのが一番安全です。例えば

  • フルマラソン目標がサブ4:5:40/km
  • インターバル走の最初の設定:5:00〜5:10/km(フルマラソンより10%前後速いペース)

先述のIペースよりは遅いペースですが、最初はこのくらいでも十分な刺激になります。
これくらいのペースからまずは始めてみて、慣れてきたら少しずつペースを上げてゆきましょう。

マラソンで結果を出すために最も大切なことは、
怪我をせずに、とにかく練習を継続することです。

インターバル走にはじめてチャレンジしする方は、まずは怪我しないことを第一に取り組むことをおススメします。

まとめ


フルマラソンのトレーニングについて調べていると、さまざまな理論や練習方法に出会います。

インターバル走が重要だという意見もあれば、フルマラソンには必要ないという意見もあります。

ただ、市民ランナーの世界を見ていると、トレーニングの正解は必ずしも一つではありません。
ロング走を中心に走力を伸ばしていく人もいれば、インターバル走のようなスピード練習を楽しみながら記録を伸ばしていく人もいます。

それぞれが自分なりの方法を見つけながら走っているのが、市民ランナーの面白いところであり、

結局のところインターバル走が必要かどうかは人それぞれです。

ただ一つ言えるのは、楽しく続けられるトレーニングこそが、市民ランナーにとって最強の練習かもしれません。

タイムを追いかけることも、試行錯誤することも、走ることを楽しむことも、すべてランニングの魅力の一つです。このコラムが少しでもあなたのランニングライフが、より豊かになるきっかけになれば嬉しいです。

おわり

筆者プロフィール

K2
K2
1981年生まれのおっさん市民ランナー、東京・駒沢公園を拠点に2019年から活動しているランニングクラブ「TRANSIT RUNNING CLUB(TRC)」を運営、週末に月3〜4回ペースで活動中
入会手続き不要、参加費無料なので、お気軽にお越しください
練習会情報&エントリーはFacebookページに掲載
<Facebook公式サイト>https://www.facebook.com/komazawatrc

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